要 請 書
1 私達は、昨年6月12日、「市民の裁判員制度つくろう会」を発足しました。
司法制度改革審議会が「裁判員制度」を提唱し、政府の司法制度改革推進本部において、「裁判員制度」の立法作業が始まりました。しかし、今の立法過程の論議は私たち市民にとって極めて不透明なものであり、これから裁判員になろうとする市民の意見をくみ上げて制度設計をする姿勢が残念ながら見受けられません。
そこで、私たちは、立法過程に市民の声を反映させ、市民本位の裁判員制度を実現したいと考え、この会を結成しました。
結成に参加した会員は、それぞれ性別、年齢、社会経験や職業、居住地が異なりますが、以下の4つの共通点で一致しました。
1) 立法過程に市民の声を反映させること
2) 裁判員の数は裁判官の少なくとも3倍以上とすること
3) 直接主義・口頭主義を貫くこと(法廷で、直接裁判員の前で繰り広げられる証言や証拠調べによって判断する仕組みとすること)
4)市民にわかりやすい言葉で裁判をすること
私達はこの間、裁判員制度に関する連続セミナー、市民公聴会、模擬裁判、院内学習会、推進本部要請など様々な活動を行ってきました。
今後さらに議論を重ねて、市民に望ましい裁判員制度のあり方を提言していく予定です。
2 裁判員制度について、是非十分な報道をしてください。
裁判員制度に関しては、制度設計の論議が大詰めを迎えている今日、未だ市民の間で十分に認識されておらず、論議が深まっていない状況にあります。
このままでは、これから裁判員になる市民の声を十分に反映しないまま、制度設計がなされてしまうことが危惧されます。
戦後初めて司法に直接市民が参加する制度を創設するにあたって、それが真の市民参加たりうるものとなるには、参加する市民の意見を十二分に反映させることが極めて重要です。
現在何が争点になっているのかわかりやすく市民に伝え、市民の関心を高め、世論を喚起したり市民の声を伝達するには、報道の役割が極めて重要です。
例えば、司法制度改革推進本部は、現在五月末日までを期限として「裁判員制度」に関する国民の意見募集を行なっていますが、このことは市民にはほとんど認識されていません。また司法制度改革推進本部は、裁判員制度導入に際し、一般の市民の意見を聞くヒアリングや公聴会の開催などを一切行っていません。こうした現在の立法過程を巡る状況を是非報道していただきたいと私たちは考えています。
また、「検討会」の中では、裁判員の人数を出来る限り少なくしようという意見が有力に主張されていますが、果たしてそれでよいのか、十分に市民の間で論議がなされることが望ましいと私たちは考えます。裁判員制度導入にあたって、現在の刑事司法手続の改革の必要があるか否かも非常に大きな問題です。
そして、こうした問題が広く市民の間で議論されるよう、今後、十分な取材・報道をよろしくお願いします。
そして、この制度改革にあたり、「市民の声を十分に取り入れているか」「真の市民参加に値する論議がなされているか」について、メディアが十分なチェック機能を果たされるよう強く期待します。
3 裁判員制度と報道のあり方について
(1)去る3月11日「司法制度改革推進本部」が提出した裁判員制度に関する「たたき台」には、報道規制が触れられています。
私たちは、裁判員制度が真の市民参加制度として機能するか否かは、制度発足後も常に検証がなされ、絶えず改革を重ねてよりよい制度としていく必要があると考えます。その意味で、メディアのチェック機能は非常に重要です。こうした点から私たちは、裁判員制度導入にあたってメディアの取材・報道を法的に規制することは慎重であるべきと考えます。
(2)しかしながら、過去にメディアが事件報道を巡って個人の人権を傷つける事例は多く見られました。被害者のプライバシーが蹂躙された東電OL事件報道、無罪推定の立場に立脚しない報道被害をもたらした松本サリン事件報道等、個人の尊厳に配慮しない事件報道がなされ、そうした問題は残念ながら現在も解消されていません。報道被害によって、ひとたび傷つけられた名誉・精神的苦痛を回復するのは極めて困難です。
メディア側も現在、こうした状況を改善される自主的努力をされていることと思いますが、新しい刑事裁判の制度がつくられるのを機会に、抜本的な自主的見直しが進められることを期待します。
被疑者の無罪推定の原則を尊重し、被害者の人権に立脚した報道がなされるよう、市民の意見も聞きつつ、見直しをされるよう求めるものです。
(3)一方、裁判員になる市民の立場からみると、安心して裁判員に市民がなるには、プライバシーや安全が脅かされないことが極めて重要です。
裁判員になったために、プライバシーをメディアに公開され、取材攻勢に晒されて日常生活に支障が生じたり、メディアを通じて当事者に住居を知られてしまい、裁判の報復を受ける危険に怯える、ということがあっては、市民が安心して裁判員になることができなくなります。それは裁判員制度そのものに市民的基盤を失わせることとなるでしょう。
私たちは、裁判終了後にメディアが裁判員ないし候補者に接触することを否定するものではありませんが、接触は、裁判員・候補者の立場を尊重した節度あるものであるべきであって、裁判員・候補者のプライバシーを侵害することがないよう十分な配慮がなされるべきと考えます。
是非この点についても自主的なルールづくりを期待するものです。
4 市民のヒアリングの機会を要求してください。
5月17日に、メディア3団体の要請に基づき、メディア3団体を対照としたヒアリングが「裁判員制度・刑事検討会」で行われる予定と聞いています。
この間、私たち「市民の裁判員制度つくろう会」では、これから裁判員になる市民を対象とするヒアリングを行うよう再三にわたり要求してきましたが、未だに実現していない状況です。これまでに行われたヒアリングで対象となった団体・個人は最高裁、法務省、警察、日弁連、被害者関係者、連合、日経連の7者だけであり、市民の声を十分に聴取したとは到底いえないと考えます。
私たちは、この制度が市民の声を十分に反映したものとなるには、一般市民のアリングが不可欠であると考えています。
是非、5月17日のヒアリングを最後の意見聴取の機会とされないよう、貴団体からも意見を述べていただければ幸いです。
以上