■2003年1月18日 連続セミナー第2回
ここが問題!いまの刑事裁判〜「裁判員制度」は刑事裁判をかえることができるか〜 
〜東京:弁護士会館5Fー

                              

    講師:立教大学法学部教授 荒木伸怡さん
        弁護士・第二東京弁護士会 神山啓史さん
        元裁判官・東京経済大学教授 守屋克彦さん
     

今回のセミナーは、多くの事務方の協力に加え、第1回目より広報が行き渡った事もあり、参加
者58人と盛会でした。
片山代表が連続セミナー開催の意義を説明した後、司会が3人の講師を参加者に紹介し、直ち
に神山弁護士の講演に入りました。
 神山弁護士は、ネパール人の男性被疑者が、第1審無罪にも係わらず、拘留されたまま第2
審を余儀なくされしかも逆転有罪とされ話題となった、東京電力OL殺人事件を中心にしながら、
現状刑事裁判の問題点として下記の6点を示されました。
1.別件逮捕
 本件に関しては、被疑者をオーバーステイという全く殺人事件とは関係無い容疑で逮捕し、い
きなり殺人の容疑者として取調べが始まった。
 本人はオーバーステイについての取り調べだと思って出頭したにもかかわらずである。 この
ような逮捕は本来許されるべきではないのではないか。
2.厳しい自白の追及
 黙秘権を無視しているかのように、答えない場合にはひたすら話すことを説得するが、これは
殆ど説得ではなく強要である。取調室の様子を録音・録画することが再三話題になるが実現し
ない。
3.供述調書が証拠として簡単に採用されすぎる
 供述調書は、警察官、検察官が作成したものであり、本人の押印があるとしても、本人が法
廷でその内容を否定した場合にはその本人の法廷での証言が優先されるべきなのに、調書の
方が証拠として採用される。裁判官がとにかく調書を見たがるということとあいまって、このこと
があるべき刑事裁判の姿を歪めていると言っても過言ではない。 また、本件の場合には、同
居の外国人も厳しく取り調べられているが、これらの証人は裁判時には帰国しており、証人とし
て出廷できないという問題もあった。
4.有利な証拠が隠される
 検察官は検察に有利な証拠のみを開示し、被疑者に有利な証拠は隠される。これで、公正、
公平な裁判がなされていると言えるだろうか。
5.無罪判決に対して検察官が控訴した
 刑事訴訟の原則は、合理的な疑いが残る限り無罪としなければならないというものである。
第1審無罪と言う事は、合理的な疑いが残っていると言う事が認められたと言う事である。そう
であるならば、無罪判決に対して控訴を認めると言うこと自体がおかしい。
6.逆転有罪になった
 裁判官の判断は非常識なことが多い。現場からは4本のそれぞれ別人の陰毛が採取された。
そのことが後日明らかになっても裁判官の判断には影響しなかった。
 さらに明らかな誤判の例として、草加事件における血液に関する判断例が示され、キャリア
裁判官の玄人判断は正しいのかと疑問が呈された。また、この観点から裁判員制度への期待
に言及された。

 以上の6点が示された後、会場からの質疑応答に入った。最初に、アメリカのミランダ事件で
確定された、被疑者の有する権利の告知に関する質問が出され、荒木教授、守屋教授、神山
弁護士それぞれから一通り回答があった。荒木教授によると、アメリカでは黙秘権や弁護士の
立会い権等被疑者の有する権利は、全ての警察官が暗記していると言っても過言ではなく、
言い忘れるなどと言う事はまず考えられないくらい徹底しているということであった。これに対し、
神山弁護士からは、日本でも勿論黙秘権は認められているが、被疑者が黙って話そうとしなく
ても執拗に話すように説得する。そしてこの説得は違法ではないとされているという実体が紹介
された。
 休憩の後は、守屋教授、荒木教授のコメントもあり、裁判員制度への期待にシフトしながら、
会場をまじえて極めて有意義な質疑応答がなされた。特に、神山弁護士の、人はだれでも個
性を持っている。裁判官の個性は皆同じ方向を向いているから問題だ。しかしながら、裁判員
はみなばらばらの個性を持っている筈だから大きな間違いをし難くなるのではないかとの意見
は、会場の参加者にも分りやすかったようである。この観点は、荒木教授、守屋教授も表現こ
そ異なれ一致していたようであった。
司会者が、「その利点を生かすためにはやはり少しでも多くの裁判員が必要ですね」と締めくく
ったのに対し、多くの参加者がうなずいてくれた事は、このセミナーの主催者側に大きな励みを
与えてくれるものであった。
 軽妙な新倉事務局長の閉会挨拶も好評で、アンケートの結果からも、参加者の満足度の大
きかった事が確認された。
                                             (文責:滝田清暉)






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