ただいま,御紹介にありました,早稲田大学の宮澤です。
今日は,非常に残暑が厳しくて,先ほど,地下鉄の中でアナウンスがあった
ところによれば,光化学スモッグ警報が出そうだということなんですけれども
,そういう状況にもかかわらず,これほどお集まりいただきまして,本当にあ
りがとうございます。これからも,どんどん参加者が増えることを期待してお
ります。市民の裁判員制度つくろう会の発起人の1人として,簡単にごあいさ
つ申し上げたいと思います。
司法制度改革といいますと,よく報道されるのは,司法制度の容量を拡大す
る,そして,法律家の数を増やして,司法制度が国民にとって使いやすいもの
にしようというのが,よく報道されることなんですね。
比較的最近も,司法制度改革推進本部の顧問会議に小泉首相が出席して,訴訟
期間を2年に短縮にすると,民事事件ですとか,訴訟期間を2年に短縮すると
いう発言をしたことがマスコミで報道されておりましたけれども,いかにして
司法制度の容量を拡大するか,そして,迅速な裁判を行うかということが,強
調される傾向にあるわけです。
しかし,司法制度改革というのは,決してそれだけに終わるものではありま
せん。単に,迅速に審理が行われればよいと,あるいは,全国各地に弁護士が
存在するようになればよいというものではありません。
裁判それ自体の内容が好ましいものに変わっていかなければいけないわけで
あります。そのために,運動がありましたのは,いわゆる法曹一元運動という
ことでありました。つまり,裁判官の供給源を拡大するということであります
。しかしながら,この運動は私もコミットしておりましたけれども,所詮は法
律家の中での供給源の拡大であります。基本的には,弁護士経験を持った者の
中から,判事補という段階を廃止して,いきなり裁判官になる,つまり判事に
なるという制度を実現しようというのが,法曹一元運動であったわけです。
しかし,これでは,裁判制度の改革としては,まだまだ中途半端ということ
になります。何が起こっているのか,言うまでもなく,裁判制度をいかに民主
的なものにするか,司法制度にいかにして民主的な基盤を与えるかという,む
しろ,政治構造全体の中での司法制度の一翼に大きく変革している,そのよう
な意味づけを持った改革というのが残されることになるわけであります。
今回,公聴会が開かれております。裁判員制度というのは,その方向へのひ
とつのステップと位置づけることができるであろうと思います。
今回の司法制度改革審議会の提言では,刑事事件の一部について,裁判員制
度を導入するという提言にとどまっているわけでありますけれども,もしこれ
が成功すれば,更に,国民参加が拡大していくことによって,裁判全体につい
て民主的基盤を拡大していくという展望も将来に開けるのではないかというふ
うに思います。
そのように考えますと,よく報道されております,裁判員を裁判官との比率
において,どのくらいの数にすべきかというのは,単なる技術的な問題ではな
いわけであります。技術的な問題にすぎないという発想というのは,どういう
ところからくるかといいますと,裁判員というのは,裁判官の補助者として,
裁判に参加するにすぎないのだ,したがって少数でよい,あるいは専門知識を
持った人だけでよい,こういう議論になるわけであります。
しかしながら,そうではない,裁判員というのは,司法に民主的な基盤を与
える存在である,したがってコミュニティの様々な市民が,できるだけ多く,
代表されるような構造になければいけない。そして,市民の様々な背景に基づ
く発想が,事実認定や法解釈に影響を与える。そして,裁判官と対等の形で審
理に参加することができる,そのようなものにしなければならないと考えるな
らば、裁判員の数は,決して少数でよいというわけにはいかないわけでありま
すし,また,裁判員の選択の仕方というものについても,慎重な検討が必要と
されるわけであります。
このような問題を検討する機関として,言うまでもなく,推進本部に検討会
が設置されております。しかしながら,検討会といいますのは,その背後に,
もちろん事務局が存在するわけでありまして,その事務局を構成する大多数の
人々は,法務省なり,裁判関係者であれ,いわゆる司法官僚なのであります。
つまり,司法官僚主体の組織が,司法制度そのものの改革に,心から前向きに
取り組んでくれるということが期待できるかどうかというのは,必ずしも楽観
できないわけであります。
その意味で,検討会における議論は重要でありますし,そして,検討会に向
けて,更には司法制度改革推進本部に向けて,国民がどのような期待を持って
いるのかということを,明確に伝えるということが必要であります,そのよう
な一つの試みとして本日の市民が開く裁判員制度,公聴会といったものが企画
されております。プログラムをご覧頂けば分かりますように、かなりの長時間
に、しかも非常に盛りだくさんの構成になっておりますので、なかなか皆さん
全部をフォローして頂くのは大変かもしれませんけれども、せっかくの機会で
すし、先程申し上げましたような非常に大きな意義を持つ機会であると思いま
すので、ぜひ最後までご参加いただき、そして、パネリスト以外にもですね、
発言の機会があればよいのではないかと、発起人の一人として期待しておりま
す。