「裁判員制度・刑事検討会」再現コーナー
〜6月11日 裁判員制度・刑事検討会(第4回)議事禄/議事概要より〜
検討会メンバー:池田修(東京地方裁判所判事)・井上正仁(座長:東京大学教授)・大出良知
(九州大学教授)・清原慶子(東京工科大学教授)・酒巻匡(上智大学教授)・
四宮啓(弁護士)・高井康行(弁護士)・土屋美明(共同通信社論説委員)・中
井憲治(最高検察庁検事)・平良木登規男(慶応義塾大学教授)・廣畑史朗(
警察庁刑事局刑事企画課長)
当日配布した資料はこちらです!
座長:
意見書を踏まえて、まず基本的な考え方についてご意見を伺います。
A:
どの範囲の事件を対象にするかにもよりますが、現行法で3名の裁判官が合議で裁判す
るべきとされている、いわゆる法定合議事件については、改革後も、裁判員が加わらない
場合が残る可能性があります。そうであれば、裁判員が加わる場合は、裁判官だけで合
議する場合よりも重い事件を扱うことになるわけですから、やはり裁判官は3名とするべき
です。
座長:
今おっしゃったのも一つの論理的な筋道でしょうが、第1ラウンドですので、幅広く議論して
いただければと思います。
B):
まっとうな合議が可能な人数に限定すべきですから、例えば20名とか30名というのは論
外です。裁判員が主体的に意見を言うために必要かつ十分な人数とすべきでしょう。また、
裁判官も複数関与していなければ、裁判員の方は、いろいろなプロの裁判官の意見を聞く
機会がなくなるので、結局、裁判員が自由にものを考え、主体的にものを言う際に、参考と
すべき選択肢が少なくなってしまいます。ですから、裁判員が加わる場合でも、裁判官は、
少なくとも2名は必要でしょう。
座長:
先程のご意見は、裁判官の数をまず起点とすべきということでしたが、ただ今のご意見は、
全体の数や規模をどうするかという絡みで、どのくらいの裁判員が必要かつ十分かというこ
とですね。さらに、評議の仕方や評決の方法も、密接不可分に関係してくると思います。
C:
意見書を出発点とすると、現在と同じくらい詳しく判決理由が書ける程度に、詳しく評議でき
る規模にすべきです。また、裁判員が主体的・実質的に関与できるためには、裁判官と裁
判員がそれぞれの知識・経験を持ち寄って徹底的に討論する必要があります。コンパクトな
もの、つまり、裁判官3名に若干の人数の裁判員が加わる程度が適当でしょう。
D:
裁判員制度は、今までの制度を基本にしながらさらに良くしようというのですから、裁判官は
3名とすべきです。また、裁判員が意見を言いやすく、しかもちゃんと合議ができるためには
、裁判員の数は裁判官と同じくらいかやや多い程度が適当だと思います。
E:
意見書を前提としても、いろいろな可能性がまだ残されています。大きすぎない規模といって
も、まだいろいろな考えがあり得ます。意見書のいう、「健全な社会常識の反映」ということに
は、「多様な意見の吸収」という意味があると思われます。陪審制の例から見て、10人程度
でもちゃんとした評議ができると言えますし、裁判員が主体的・実質的に関与するには、裁判
員の人数が多いほうがいいと思われます。結局、裁判官・裁判員を合わせて、最大12名程
度にすることもあり得ます。
座長:
ちょっと確認させて下さい。仮に裁判官が3人だとすると、裁判員は、10人程度いないと、主
体的・実質的に関与できないということでしょうか。
E:
絶対的にできないというつもりもありませんが、10人いた方がやりやすいでしょう。なぜかと
言えば、裁判官が日常的に事件に関わり、審理を担当するのに対して、裁判員は、1回限り
、その事件に限り、裁判に関わるわけです。やはり専門家である裁判官と対等に議論ができ
るかどうか、疑問があります。
座長:
ありていに言えば、人数は多いほうがやりやすいだろうということですか。
E:
そうです。
A:
裁判員制度は、裁判官と裁判員とが団体交渉するわけではありません。一人一人の裁判員
が主体的・実質的に関与することで、良い結果に結び付くようにすることが重要です。議論が
なめらかにいくためには、全体の人数はどれくらいが適当かと考えれば、自ずと規模は決ま
ります。裁判官3名が動かせないとすると、全体としての規模は、例えば、最高裁判所小法
廷の人数である5名が一つの参考になるのではないでしょうか。
座長:
その点は、意見が分かれるところだと思いますね。
F:
社会心理学では、どのくらいの人数でどのくらいちゃんとした議論ができるか、グループ内の
それぞれの人の地位や知識の差がどのような影響を与えるかという研究があります。こうい
う科学的知見を吸収して、議論すべきと思います。
座長:
「科学」といってもいろいろなものがありまして、ここでは、ご自分が信頼できると思うものを
踏まえ、ご意見を言ってください。
G:
裁判員が発言しやすく、きちんとした判断ができることを重視すべきです。また、裁判官のみ
による裁判も残るので、それとの整合性も必要です。したがって、裁判官は3名とするべきで
す。他方、一般の国民が主体的に関わってもらえる時間と労力には限度があるので、あまり
大きな規模は考えにくいでしょう。市民参加の活動経験からみても、誰がコーディネート能力
を果たすのかという点がもっと重要です。それぞれが価値観を披瀝して自己の意見を語れる
ことが必要です。ですから、あまり大規模なものは望ましくないでしょう。
座長:
まだご意見を伺ってない方、どうぞ。
H:
精密司法と呼ばれる現状には批判もありますが、争いごとを判定すれば、当事者のどちらか
に不満が残ることは避けられません。むしろ大事なことは、判断に至った理由を説明すること
です。論点ごとの結論だけを示すなら別ですが、現状のような実質的な判決理由を書くため
には、意見を出し合い、自己の疑問を解消しあるいは疑問を深めるなどしながら、全員ができ
るだけ納得して結論に至るためには、緊密な合議を重ねる必要があります。要するに、規模
はコンパクトにならざるを得ないでしょう。
F:
裁判官のみの場合とのバランスを図るとか、詳しい判決理由が必要ということから規模に制
約があるという意見は、いずれも技術的なことに拘っています。意見書は、現在とまったく同
じ判決理由を書けとしているわけではありません。裁判官だけで裁判する場合も、新しい刑
事訴訟システムの中で、変わっていくでしょ。意見書は、国民参加の理念として、国民主権
や健全な社会常識の反映が大事だと言っています。要するに、健全な社会常識は、いろい
ろな人が互いに確かめ合うことで確認され、普遍性を持つわけです。人数を絞った結果、男
性ばかりとか、一定の年齢層ばかりになってはいけません。最高裁の裁判官だった岩松判
事も、論文の中で、合議で大事なことは、個人の主観性を持ち込み批判し合うことを通じて、
客観的な価値のある裁判をすることであり、主観性をいたずらに累積しても意味はないと言
っています。要するに、異質なものを集めることが重要だというわけです。ですから、相当な
数の裁判員が必要ではないでしょうか。
座長:
それはどれくらいの規模ですか。
F:
相当な規模ということです。
座長:
何十人という規模ですか。
F:
いえ。審議会では、同程度かそれよりプラス1ぐらいという意見から、12名ぐらいまでという
意見があったでしょう。
座長:
審議会では、別に全員が具体的な数について意見を表明したわけではありませんので、そ
れに拘束される必要はないと思います。もう一点だけ審議会の模様をお伝えしますと、多様
な意見を反映させるという点について必ずしも意見が一致したわけではなくて、政治的な意
見の反映ではなく、世論調査とは違うという意見も、私も含めて表明されました。ですから、
いろんな考え方があるということだと思います。
A:
裁判員は選挙で選ばれるものではないから、裁判員制度の趣旨として、国民主権という視
点は妥当ではないと思います。それに、人数が多い方が多様な意見が含まれるという主張
は、抽象的な点では理解できますが、最大でも10名程度の人数で、果たして多様な意見
が反映されるといえるのかは疑問があります。
B:
裁判員は、2つの食い違った証言のどちらを信用するかという作業を行うということが前提で
あり、多様な意見の反映といっても自ずと限定があるはずで、老若男女すべてを取りそろえ
ておかなければ、証言が嘘か本当かの判断ができないというものではありません。
F:
そんなこと言っていません。この制度が健全な社会常識を反映させたものだ――国民がそう
受け取るようなものが必要だと申し上げているのです。
座長:
審議会でも、多様な意見の反映ということを強調する意見もありましたが、裁判は多様な意
見の反映ということにはなじまないという意見もあり、結局、審議会としては、素人の健全な
社会常識を持ち込むことに意義があるということで合意しました。実際、刑事裁判で、国民の
間に多様な意見があることが、証拠の評価や事実認定の上で大きな意味を持つとは考えら
れませんな。
J:
意見書は、国民的基盤の確立が裁判員制度の目的だと言っています。裁判官よりも裁判員
が少なければ、この目的を果たせません。また、諸外国の例を見ると、裁判官1名と複数の
裁判員でもおかしくはないでしょう。法定刑に死刑・無期懲役の含まれる事件は、規模の大
きな合議体で、その他は小規模な合議体で、ということも考えられます。あまりに小さな規模
にしてしまうと、国民参加の意味がないと思われます。
座長:
召喚される裁判員候補者のことやどのような範囲の犯罪を対象とするかということも含めて、
考える必要があります。
D:
裁判員が加わらない合議体で裁判をする場合が、仮にあり得るとすれば、より重い犯罪を裁
判する、裁判員が加わる場合には、裁判官が少なくてよいというのはおかしい。他方、現在、
合議体で裁判している事件をすべて、裁判員が加わる裁判所で扱うなら、そのうち軽い方は
裁判官1名と裁判員2名とし、重い方は裁判官3名と裁判員数名とすることも考えられるでしょ
う。しかし、これが意見書に沿うものかどうか、疑問ですな。
座長:
意見書は、法定刑の重い罪について国民が参加する裁判員制度を取り入れるべきだとしか
言っていないのです。
D:
私が言いたかったのは、国民の負担とか、財政的な負担とかを考えて、もうちょっと考えてみ
たらどうかということです。
座長:
ご趣旨は、国民が参加する意義があるようなものを対象にすべきだということでしょうか。
D:
私は、もともと軽い事件に導入するべきだというふうに考えていました。ただ、この考え方は明
らかに意見書に反するでしょうね。
座長:
意見書も、まず重い事件から始めようと言っていますが、将来の可能性を封じているわけでは
ないでしょう。
C:
繰り返しますがね、健全な社会常識が反映され、国民的基盤を確立刷るために、直ちに裁判
員の人数を多くすべきだとか、裁判体の規模が大きくなければならないと言うことにはならな
いんですよ。むしろ、個々の国民が責任をもって裁判に関与することがポイントであって、裁判
体構成員の間の相互コミュニケーションのプロセスが大事なのですから、実のある議論をする
ためには、かえってコンパクトな合議体の方がよいのです。
F:
裁判員が無作為抽出で選ばれ、1つの事件だけを担当するわけですから、相当多くの裁判員
が必要です。裁判官だけが裁判する場合には、刑罰権行使を慎重にすることから3名の裁判
官が必要だとも言えましょう。しかし、裁判員が加わること自体が異なった主観性が入る新しい
仕組みであって、その場合でも裁判官は3名必要だとする理由はないでしょう。2名でよいとい
う案も提案されたことがありました。だから、裁判官の人数も見直してよいのではないでしょうか。
座長:
だんだん話が大きくなってきましたね。その点は、対象事件をどの範囲に設定するかということ
とも関連すると思います。その辺も議論した上で、またという事にしたいのですが、一点、岩松
判事の論文は、現行の裁判官による合議体についてその利点を指摘されたもので、裁判員が
加わることについて述べたわけではないのではないでしょうか。ひとあたりの議論としてはこの
辺りにして、次に移らせていただきたいと思います。
以上
市民の裁判員制度つくろう会事務局
事務局長 : 新倉修(青山学院大学教授)
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