要 請 書            

司法制度改革推進本部  御中
同顧問会議       御中
同「裁判員制度」検討会各委員殿

                                    2002年7月9日
                           市民の裁判員制度つくろう会

第1 市民の立場にたって制度設計を議論してください。

1 去る6月11日、司法制度改革推進本部「裁判員検討会」で、裁判員制度に関する論議が開始されました。私たちは翌日の新聞で、裁判員制度の構成について、ある検討委員が「職業裁判官は3名、裁判員は2名」と発言していると知り、大変驚きました。その後、なかなか「検討会」の議事録、議事概要は公開されず、やっと公開された「議事概要」をみて、さらに驚きと失望を感じています。議事概要を見る限り、多くの発言は「参加する市民の人数を少なくしよう」という方向性の議論であることが見て取れます。それはとりもなおさず、「市民参加をできる限り抑えこむ」議論にほかならないと思います。今回の司法改革の重要な柱であり、私たちが最も期待する「国民の司法参加」の意義と重要性について、検討委員が十分な理解をされているのだろうか、と大きな疑問を感じました。

2 市民の立場に立って考えてみてください。裁判員制度で裁判員になる市民のほとんどは裁判を経験したことも、裁判官と話しをしたことも、まして裁判内容を決める判断などしたこともない人たちです。誰しも、経験豊富な人間が専門用語を駆使して自信をもって述べる意見に対して、疑問を呈したり反対することは勇気がいることです。それが裁判官であれば、なおさらのことです。しかも、単に反対意見を言うだけでなく、裁判官から逆に反論され説得されても、臆せずに自分の意見を説得力をもって展開していくには、相当の勇気と努力が必要です。

 裁判員が単なるお飾りでなく、それぞれが意見を十分に述べて論議を尽くし、市民の良識を裁判に本当に反映させるためには、裁判員が特に注文しなくても、平易な理解できる言葉で評議が行われ、裁判員が臆することなく意見を言える環境、市民の良識を反映することが可能な環境でなければなりません。私たちは裁判官が市民の言葉で語り、裁判員が十分に意見を述べる評議を保障するため、少なくとも裁判官の3倍の裁判員−市民の数が必要だと考えています。 

 裁判経験も法律知識もない市民2人が3人の裁判官に囲まれるという環境は市民が自由に自分の意見をいいやすい環境、裁判官の意見に疑問を呈したり反対意見を述べたり、論議のなかで裁判官を説得しうる環境だとは到底言えません。

例えば検討会の皆さんが3人で、法律用語を駆使して激論をかわしていたとします。その中に市民の方が入って一緒に議論しようとした場合、果たして何人の市民の方が沈黙せずに意見を述べることができるでしょうか。よく考えてみてください。

3 検討会の発言のなかでは、十分な議論のためにはコンパクトな規模がよい、という発言が目立ちます。しかしアメリカの陪審制度は12人、日本の検察審査会制度も11人の人々による論議が十分に行われ、立派に機能し、定着しています。また、司法制度改革審議会も13人の委員が議論し、大きな成果を残しました。推進本部顧問会議も、裁判員検討会も、なぜ10名以上の各界の人々を集めて議論しているのでしょうか。社会の良識を反映した正しい結論を出すには、多様な経歴・経験を持つ相当数の人々が議論しあうことが重要であるからにほかなりません。

市民の負担の観点から裁判員の人数を減らす議論もあります。市民参加を決めた以上、必ず市民には負担はかかります。しかし、市民参加は市民の崇高な義務であり権利です。「市民の負担」の点で考えられるべきは、市民にとって参加しやすい制度をつくるかどうか、参加した市民が「参加してよかった」と思える制度をつくるかどうかではないでしょうか。市民が単なるお飾りとして難解な裁判につきあわされ、自分の意見も十分に言えない制度であればそれは市民にとって苦痛以外の何物でもないと思います。

4 以上の観点から、私たちは、裁判員の数は少なくとも裁判官の3倍以上であることを制度要求します。是非、参加する市民の視点にたち、市民参加の意義に立ち返って再度議論をされるよう要望します。

第2 公判手続についても市民の立場にたった改革を求めます。

公判手続においては、市民に理解できる言葉が使われ、市民に理解可能な訴訟運営がなされるように制度設計をされることが必要です。裁判官も検察官も弁護士も、市民の言葉で語り、裁判を進行することが必要です。
 現在の刑事裁判では、裁判官は証言だけでなく、膨大な書類を丹念に読んで論議し有罪・無罪を決めるようですが、到底そこまですべての市民がなしうるとは思えません。これらの難解な書類が今後も証拠とされた場合、これを裁判官のみが精読し有罪・無罪の議論をリードすることになれば、書類を読みきれない市民は沈黙するほかなく、結果的に市民の発言権は阻害されてしまうでしょう。
 すべての市民が責任をもって、誠実に裁判に向かい合い、真実を見極める役割を果たすことを可能にするには、公判で行われた証言のみを判断の基礎とする−証拠とすることがどうしても不可欠だと思います。

 私たちは、裁判員制度のもとでの裁判について、市民にわかりやすい言葉が使われて進行する裁判、裁判・公判での証言などのやりとりだけで争点がわかり判断が可能な裁判を求めます。

この点でも是非市民の視点から今の裁判を検証し、180度転換する改革をされることを強く要請します。


第3 市民への情報公開について

  裁判員制度の立法過程の情報公開は極めて不十分というほかありません。議事概要によれば、6月11日の検討会では最後にある委員から「裁判員制度は国民の支持・協力なくしては動かない制度であるから、検討会委員としても、制度設計の段階から国民への情報提供を念頭に置くべき」という意見が出されています。是非今後制度に参加する市民の視点にたって、以下の通り、情報公開をしてください。

 1 リアルタイム公開を実現してください。

前記のとおり、6月11日の議事概要のHP上の公開はかなり時間が遅くなってから行われました。議事録に至っては、6月11日のものも、5月23日のものもまだ公開されていません。これでは到底リアルタイム公開とはいえません。速やかなリアルタイム公開を求めます。

 2 発言者名を明らかにしてください。

議事概要・議事録とも、いまだに発言者名を伏せたものになっています。そのためどんな論議がなされているかとてもわかりにくい状況です。例えば6月11日の議事概要をみても、裁判員の人数を少なくする発言は、同一人物が何度も発言したのか、検討委員の多くの人が発言したのかすらわかりません。発言者名を明らかにしている検討会の議事録はとても議論の流れがわかりやすいのに対し、裁判員制度検討会は議論の実情が全く伝わってきません。市民に対する情報公開として到底十分とはいえません。
発言者名の公開を再度強く求めます。

  3 傍聴を求めます。

  私たちのHP等の広報手段を通じて、検討会の情報を市民に公開してい
  きたいと考えます。私たちの広報担当者に傍聴を認めてください。

  いかなる基準を満たせば、メディアとしての傍聴が認められるのか基準
  を示してください。

 第4 制度設計にあたり、一般市民の声を聞く機会を広く設けてください。

 司法制度改革審議会最終意見には裁判員制度について、「この制度が機能するためには国民の積極的な支持と協力が必要になるので、制度設計の段階から、国民に対して十分な情報を提供し、その意見に十分耳を傾ける必要がある」と書かれています。また意見書の最後には「国民一人ひとりが、共通の課題として改革の実現過程を冷静かつ厳格に見つめ、内閣を中心とした推進体制に対して忌憚のない意見、要望等を寄せるとともに、絶えず改革のための力を与え続ける必要がある」と書かれています。
 市民を改革のパートナーと考え、制度設計に市民の声を反映させることは、この制度の実現にとって不可欠です。冒頭の裁判官・裁判員の人数の問題が、市民の意見とかけ離れたところで行われている状況はゆゆしきものがあります。是非、裁判員になる一般市民の声を聞く機会をひろく設けてください。

私たちは以下のことを要求します。

1 全国で一般公募により市民から意見を聴取する公聴会を開催すること

2 ヒアリングの機会は多数回設定し、労働団体、消費者団体、女性団体等ひろく一般市民が参加する団体や、既に市民参加を実現している検察審査会友の会などを対象とするとともに、こうした組織に所属しない一般の市民の意見を聞く機会を設定すること。後述のとおり市民の会も対象としてください。

3 検討会会議日程とは別に、上記公聴会・ヒアリングの日程を早急に設定すること。

 第5 ヒアリング対象に立候補します。

 私たち「市民の裁判員制度つくろう会」は、裁判員制度に関し、一般市民の声を立法過程に反映させることを目的とした市民団体であり、会員の多くは一般の市民です。
 職業、年齢、性別等が異なる多様な人々が参加していることの一端は、世話人の一覧をみていただければおわかりいただけるかと思います。

 会員は現在150余名、一般の会社に勤めている会社員など、まさに今後裁判員となる人々が参加しています。
 私たちは、裁判員になることに意欲とともに不安も感じている一般の市民からヒアリングを行い、こういう制度であれば参加しやすい、という意見を十分に聞くべきだと思っています。
 今年の9月にヒアリングが行われると聞いています。是非この機会に私たちの会として、一般の市民をヒアリング対象に推薦したいと考えますので、是非当会をヒアリング対象にされるよう申し入れます。

                               以上